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前回からの続きです。
これまで様々な業種の多くの経営者にお会いしてきましたが、事業で莫大な富を築き上げた億万長者の経営者たちに共通しているのは、驚くほど「シンプルで過不足がない」という点です。
複雑化させることは、それ自体が経営の「過」なのです。
事業とは、いらないものをどこまで削ぎ落とせるかによって、最終的な利益率が決まります。
成功する経営者は、単なる「売上高」ではなく「利益率」にフォーカスしています。さらに言えば、それは単なる「粗利益」の数字ではありません。
多くの経営者は粗利の高さに目を奪われがちですが、その高い粗利を生み出すために、どれほどの手間や見えない経費がかかっているかという「真のコスト」を見過ごしているケースが多々あります。
例えばビルメンテナンス業で言えば、会社から物理的に遠い場所にある物件が挙げられます。
どれだけ表面上の利益率が高い案件であっても、移動するだけで多大な時間と経費が浪費されます。
営業スタッフや管理スタッフの貴重な時間が奪われることは、他のはるかに生産性の高い仕事をする機会を失うという「見えない巨大なコスト」を生み出しているのです。
さらに言えば、遠方の物件で万が一クレームが発生し、その対応に追われれば、それだけで数年分の利益が一瞬で吹き飛びます。
この「見えないコスト」こそが、会社を蝕むノイズなのです。
事業を拡大していく過程で、顧客から「これもやってくれないか」と頼まれる機会は頻繁にあります。しかし、それが自社の本来の本業でないならば、敢えて自社で抱え込まず、それを本業としている信頼できる他社を紹介する方が、遥かに賢明な判断です。
顧客からは課題を解決してくれたと感謝され、紹介した企業からはビジネスの機会を提供してくれたと感謝される。
双方に大きな恩を売り、良好な関係性を築いておくことこそが、中長期的な視点において会社に最大の利益をもたらします。
自社のアクションを本当に必要な本業だけに絞り込み、徹底的にシンプルに、過不足なく研ぎ澄ましていくこと。
それこそが、トラブルのない健全な循環を生み出し、企業の利益率を最大化させる方法であり、何より経営者自身も楽な経営ができるポイントなのです。
仕事でもプライベートでも、あらゆる物事において「情報次元で過不足がないこと」は極めて重要です。
過不足がある状態、つまり「多すぎる(過)」あるいは「足りない(不足)」というのは、情報における「ノイズ」といえます。
本当に優れた知性を持つ人の文章や会話は、過不足なく必要なことだけが盛り込まれており、非常に美しく無駄がありません。
社内外の報告・連絡・相談において、
「何を言いたいのかわからない」
というノイズの多い連絡は受け手を疲弊させてしまいます。
必要な要点をいかに無駄のない言葉で伝えるかというスキルは、一般的には目立ちにくく評価されにくいものですが、極めて重要な能力です。
事実、IQ200を超える知性を持つ人々と対話していると、彼らの伝える言葉が例外なくこの上なく綺麗な文章であることがわかります。
そして、この「過不足のなさ」は、個人のスキルに留まらず、企業の経営そのものにも全く同じことが言えます。
真に強い企業というのは、あれこれと手を広げず、これと決めた事業のみを徹底的に追求します。
目先の売上を追うために新しいものへ飛びつき、事業を複雑化させてしまうことは、企業経営における大きなノイズです。
あれこれとやりすぎると、途中で引くに引けなくなり、結果としてその雑多な業務に振り回されて本業に集中できなくなる会社を、これまで数多く目にしてきました。
特に我々の建物の業界においては、「どこまでが本業か」という一線を画していなければ、建物に関わるすべて、つまりは用地の調達から建築、管理、修繕、そして解体に至るまで、やることが無限に膨れ上がってしまいます。これこそが経営における「過(多すぎる状態)」の典型です。
また、「過不足のなさ」は「タイミング」にも存在します。
仕事は決して一人で完結するものではありません。
誰か一人が流れを止めれば全体の循環が悪くなります。
これは物理的な業務フローだけでなく、エネルギーの次元においても同様です。なぜか最初から最後までトラブルが続く仕事というのは、この「適切なタイミング」という視点が欠けていることが少なくありません。
タイミングが遅い(不足)のは論外ですが、勝手に先走って進めてしまうこと(過)もまた問題なのです。物事には、早すぎず遅すぎない、絶妙な「適切なタイミング」があります。
次回へ続きます。